需給要因だけが原因ではないコメ高騰

<備蓄米放出の影響は?>
 2024年産米は8年ぶりの増産へ転じた。一等米比率も例年並みに回復している。そのため、需給は緩和しているはずだ。だが、2024年産米の流通後も、価格高騰は収まっていない。これは、端境期である2024年9~10月頃に、2023年産米の流通在庫が枯渇していたため、2024年産米の流通・消費が例年よりも前倒しとなった影響が考えられる。

 需要動向次第であるものの、2025年夏以降に再び流通在庫が枯渇する恐れがあり、現在の価格高騰につながっていると考えられる。

 コメ価格高騰に対応して、農林水産省は備蓄米放出を検討する方針を示した。仮に実現すれば、規模にもよるが、需給逼迫を和らげる可能性がある。ただ、備蓄米は一等米の比率が小さいとみられる。飼料用や加工用、外食用の需給緩和につながりやすいものの、消費者向けの主食用にその恩恵が波及するかは不透明だ。

 そもそも、備蓄米は一時的な不作に対応するためのものだ。備蓄米放出は、構造的な供給不足への対応策としては不十分で、いずれ増産促進が課題となろう。主食用米の需給緩和には数年かかる可能性がある。

 現在のコメ高騰は、需給逼迫だけが原因ではない。主要産地の東北では、JAグループが農家から米を買い取る集荷価格が前年を2~4割上回っており、生産コスト上昇に対応して集荷価格を引き上げる動きが生じた模様だ。

 コメ価格は、現在のような前年比で5割超の上昇は長続きせず、年末に向けて上昇率が低下方向を辿るとみられるものの、下落へ転じる可能性は低そうだ。需給逼迫が長引きやすく、かつ各種コスト上昇の転嫁も続きやすい。