供給不足による影響が本格的に到来か

<「天候不順」というよりも「気候変動」?>
 生鮮食品価格が上昇基調にある背景を特定することはなかなか難しい。

 魚介類については、輸入依存度が高いので、「第1波」到来時のように円安の影響を受けやすい。一方、生鮮野菜については、国内供給が大半を占めており、供給縮小が価格上昇圧力となっている可能性がある。

 コメと同様、高齢化などに伴う作付面積の縮小が影響している可能性があるほか、「天候不順」の常態化、いわば「気候変動」が影響している可能性も考えられる。気象庁のデータに基づけば、ここ10年は高気温、多雨となる年が多い。

 そもそも、生鮮食品に一般物価上昇の影響が波及している可能性もある。生鮮魚介、生鮮野菜、生鮮果物のいずれも、均せば1970年代から80年代に上昇基調を辿り、1990年代から2010年代前半まで横ばい圏で推移した後、2010年代後半から上昇基調を辿っている。

 具体的には、既述のような燃料油など各種コストを転嫁する動きが、ここ10年の上昇基調をもたらしている可能性があろう。

<「第2波」は収束?>
 2024年後半以降に到来した食料高騰の「第2波」は、2025年末に向けて徐々に終息するだろう。食料価格の伸び率は、2025年前半をピークに縮小傾向を辿る見込みだ。

 だが、食料価格が下落局面へ転じる可能性は低そうだ。輸入コスト転嫁の影響が残るほか、人口動態や気候変動など構造的な要因により供給不足も長引き、価格上昇圧力が継続しやすい。

【宮前 耕也(みやまえ こうや)】
SMBC日興証券㈱日本担当シニアエコノミスト
1979年生まれ、大阪府出身。1997年に私立清風南海高等学校を卒業。2002年に東京大学経済学部を卒業後、大阪ガス㈱入社。2006年に財務省へ出向、大臣官房総合政策課調査員として日本経済、財政、エネルギー市場の分析に従事。2008年に野村證券㈱入社、債券アナリスト兼エコノミストとして日本経済、金融政策の分析に従事。2011年にSMBC日興証券㈱入社。エコノミスト、シニア財政アナリスト等を経て現職。
著書に、『アベノミクス2020-人口、財政、エネルギー』(エネルギーフォーラム社、単著)、『図説 日本の財政(平成18年度版)』および『図説 日本の財政(平成19年度版)』(東洋経済新報社、分担執筆)がある。