(福島 香織:ジャーナリスト)
ゴールデンウィーク中、ロシアの民間軍事会社ワグネルのトップ、プリゴジンがロシアのジョイグ国防相やゲラシモフ参謀長を呼び捨てにして激怒しながら罵っている動画がツイッターで拡散されていた。
米ワシントン・ポスト紙(5月14日付)によれば、チャットアプリ「ディスコード」に流出した米軍機密文書の中に、プリゴジンが今年(2023年)1月、ウクライナ側にロシア軍の位置情報の提供をもちかけていたという情報が含まれていたという。
ワグネルといえば東部ドネツク州バフムトの露軍側主力部隊であり、犠牲を多く出しながらもこれまで戦線を維持してきた。だがプリゴジンは、ウクライナ軍がバフムト周辺から撤退することを条件に、露軍の位置情報提供を複数回にわたって提案していたそうだ。ウクライナ側はプリゴジンを信用せず提案を拒否したとも伝えらている。
これが事実ならば、プーチンは味方と思っていた部隊からも裏切られ、いわゆる雪隠詰め(せっちんづめ)の状態で、敗戦まで秒読みではないか、という憶測も出てくる。同時に、追い詰められたプーチンが「死なばもろとも」とばかりに戦術核兵器を使用するのではないか、という恐ろしい予測を口にする人もいる。
さて、そんなプーチンの救世主になるか、あるいは引導を渡すのか、と注目されているのが、5月16日からキーウに派遣されている、中国のユーラシア事務特別代表で元駐ロシア大使の李輝だ。
習近平の「平和の使者外交」が具体的に動き始めたことになるのだが、この試みは果たして成功するのだろうか。