モスクワで共同声明に署名した中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領(2023年3月21日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国の習近平国家主席が3月20日から3日の日程でロシアを国事訪問し、プーチン大統領と会談した。

 20日夜に行われた4時間半の非公式会談、続く21日の公式会談の詳細な中身はまだよくわからない部分も多いのだが、双方は「新時代の全面的戦略協力パートナーシップ関係深化に関する共同声明」に調印。プーチンが、習近平の提案するロシア・ウクライナ間の和平協議案「ウクライナ危機の政治解決に関する中国の立場」12項目についても歓迎の意を表し、和平協議に前向きな姿勢をアピールした。

 これは、習近平がプーチンを説得して和平協議のスタートに一歩近づいた、ということなのか? いやいや、習近平の12項目提案の中には、ロシアのウクライナからの全軍撤退条件など肝心の中身がない。むしろ習近平の提案は圧倒的にロシアに配慮したものなのだ。

 折しも日本の岸田文雄首相が、5月のG7広島サミット議長国として、つまりG7の名代としてウクライナを電撃訪問。ゼレンスキー大統領と会談し、日本のゆるぎない連帯の意思と、殺傷能力のない装備品3000万ドル(40億円)分をNATOの基金を通じて供与すること、そして日本とウクライナの関係を「特別なグローバル・パートナーシップ」に格上げすることに合意した。

 こういう状況で、習近平とゼレンスキーの会談(電話会談も含め)が行われ得るのか。行われたとしてウクライナが中国側の提案に乗ってくることなどあり得ない、と思うのだが、だとしたら、この習近平の自称「平和の旅外交」の狙いは何なのか。