中国・北京の会合で写真撮影するサウジアラビアのムサード・ビン・モハメド・アル・アイバン国務相兼国家安全保障顧問(左)、中国の王毅外相(中央)、イラン最高国家安全保障会議のアリ・シャムハニ書記(2023年3月10日、写真:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国の全人代(全国人民代表大会、国会に相当)が3月13日に閉幕した。

 先に、一点訂正をしておく必要がある。全人代開幕前、中国共産党の2中全会(第20期中央委員会第2回全体会議)開催後に香港紙明報などが特ダネを報じた。この全人代の最大のホットイシューの「党と国家の機構改革方案」では、公安・国家安全部の治安維持・諜報機能を国務院から党中央に組み入れ、中央内務委員会を創設して“中国版KGB”のようなものをつくるのではないか、という情報だった。3月2日に公開した本コラム(「大粛清を始める習近平、中国版KGBの発足で『スターリン化』の気配」)でその情報を紹介した。

 だが、全人代で審議された国務院機構改革方案では、公安・国家安全部には全く言及がなかった。結果的に中国版KGBは「ガセネタ」だったということになる。

 これが香港メディアを通じた一種の観測気球や世論誘導の情報戦であったのか、それとも、予定はあったが世論の抵抗を考えて保留されたのか、今のところ不明だ。

習近平の「大国和平外交」に大きな進展

 だが、全人代を通じて、習近平が経済、ハイテク、外交、民生、軍事の全方位的政策を自ら差配する方向で人事や機構を調整していることは間違いなかろう。個人的には、習近平独裁に誰かに歯止めをかけてほしいところだが、今、国際社会の風向きが習近平の権力掌握に有利になっているのは事実だ。