(提供:アフロ)

(譚 璐美:作家)

 経済力だけでなく、基礎研究力でも中国の躍進が目立つようになっている。

 文部科学省の「科学技術・学術政策研究所」(NISTEP)は2022年8月9日、日本及び主要国の科学技術活動を体系的に分析した「科学技術指標2022」を発表した。それによると、2018年から2020年に世界で発表された論文数で最も多かった国は、第1位が中国(40万7181件)、第2位が米国(29万3434件)、第3位ドイツ(6万9766件)、第4位インド(6万9067件)と続き、日本は第5位の6万7688件である(分数カウント法による集計)。

 また、最も注目度が高い論文数の「Top10%補正論文数」および「Top1%補正論文数」(引用された件数)でも、かつては米国の指定席だった1位の座を、現在は中国が占めている。

 こうした実績を知ると、中国の研究者による論文は、質・量ともに世界をリードしているように見える。

 しかしその一方で、中国人研究者による研究の不正が横行しているという実態もあるのだ。実は中国では、論文を代行・捏造する“闇業者”が急増しており、そのせいで世界中の学術出版社が「不正」を検知することに忙殺されて、対応しきれずに困惑しているのだという。

少なくとも全体の5〜10%が偽データ含む論文

 フィナンシャル・タイムズ(2023年3月28日付)によれば、英語で「ペーパー・ミル」(論文製造所)と呼ばれる闇業者による捏造方法はさまざまで、関係のない研究で発表された細胞培養の画像を盗用したり、複製した画像を加工・削除したり、違う画像だと思わせるために反転させたものや、仮説に合わせてデータを改ざんし、正しい実験結果のように見せかけるものもある。

 英国の生物医学の専門出版社「スパンディドス」が、中国から大量に寄せられる論文を「不正検知」したところ、論文の5〜10%が偽データだと判断して、受領を拒否したとされる。