昨年3月24日、大陸間弾道ミサイル「火星17」の打ち上げに成功して喜びを爆発させる金正恩総書記と兵士(提供:KCNA/UPI/アフロ)

(山田敏弘・国際ジャーナリスト)

 北朝鮮が違法なサイバー攻撃で仮想通貨を奪うなど、外貨を荒稼ぎしている。

 この実態について、例えばNHKは5月24日、「アメリカと韓国の当局は、北朝鮮のサイバー攻撃や違法なIT技術者の外貨稼ぎが核・ミサイル開発の資金源になっているとして、関係する団体や個人に対する独自の制裁を発表しました」と報じている(「北朝鮮の違法な外貨稼ぎ 兵器開発資金源に 米韓 独自制裁発表」)。

 5月23日にも、米財務省の外国資産管理室(OFAC)が、北朝鮮のサイバー攻撃を行っている平壌にある大学機関と、情報機関である人民軍偵察総局(RGB)の関連機関に対して制裁措置を取ったと発表した

日本から980億円相当の仮想通貨を「強奪」

 日経新聞でも先日、こんな記事が掲載された

「北朝鮮がサイバー攻撃で日本の暗号資産(仮想通貨)を標的にしている。北朝鮮系のハッカー集団が2017年以降に日本から奪取した額は7億2100万ドル(約980億円)に上り、世界全体の被害(23億ドル)の3割を占めることが日本経済新聞と英エリプティック社の共同分析で分かった」(「北朝鮮、日本から仮想通貨980億円奪取 世界被害額の3割」5月15日付)

 北朝鮮が外貨獲得のために、サイバー攻撃で仮想通貨を狙っているというのはサイバーセキュリティや安全保障関係者の間ではよく知られていることだ。2023年2月に明らかになった国連の報告でも、2022年だけで北朝鮮が各地で盗んだ仮想通貨の額は10億ドルに達すると指摘されている。これは北朝鮮がこれまで1年間で奪った仮想通貨の金額として最高額である。

 北朝鮮が外貨獲得のためにサイバー攻撃を活発に行っているのは間違いない。現在はIT企業に勤める元米政府関係者は筆者の取材にこう語る。

「北朝鮮にとって、仮想通貨を狙うのは理にかなっている。制裁で経済活動が封じられていても、仮想通貨なら匿名で『買い物』ができる。盗んだ仮想通貨を現金にできなかったとしても、制裁を逃れて支払いが可能になる」

今年4月13日、大陸間弾道ミサイル「火星18」の初発射を見守る金正恩総書記と娘ジュエ氏のツーショット(提供:Office of the North Korean government press service/UPI/アフロ)