2014年7月15日、東京で開催された「ソフトバンク ワールド 2014」のイベントで、アリババ・グループ会長のジャック・マー氏を抱きしめるソフトバンクグループ代表の孫正義氏(写真:ロイター/アフロ)

 孫正義と馬雲(ジャック・マー)という今世紀最大の日中間の「友情と打算」が、23年で破綻した――。

 4月12日、英フィナンシャルタイムズ紙が、「ソフトバンクがほとんどのアリババ株を売り払おうとしている」(SoftBank moves to sell down most of its Alibaba stake)と題した記事を掲載した。ソフトバンクも同紙の取材に、「5月の3月期決算発表で詳細を明らかにするが、アリババの事業環境をめぐる不透明感の高まりに対処する守りの姿勢を表したもの」と答えたという。

 ソフトバンクはもともと、アリババ株の23.7%を保持していたが、昨年、14.6%に引き下げた。それをさらに、3.8%まで低下させるという。今年の売却益は、約72億ドルだ。

 一体何が起こっているのか? 孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長と、馬雲アリババ創業者・元会長の「友情と打算の23年」を振り返ってみよう。

「ぜひ投資させてほしい」

 両雄の邂逅(かいこう)については、孫会長が2014年3月期決算の発表会の席で披露している。

「2000年(1月)に訪中した際、20社くらいの(中国の)若いインターネット企業の社長と会い、1社あたり10分ずつ話を聞いた。その中でただ1社だけ、私が即断即決で投資を決めたのがアリババだった。最初の5分、ジャック・マーからプレゼンを聞いて、残りの10分は私からマーに、『ぜひ投資させてほしい』と頼み込んだのだ。

 マーは『では、1~2億円出してほしい』と言ってきたが、私は『いや、20億円受け取ってほしい』と言った。その後、私はマーと押し問答をやって、『何としても受け入れてほしい。お金は邪魔にならないだろう』と説得。結果、マーも『分かった』となった。