4月5日、ロサンゼルスで会談した台湾の蔡英文総統と米国のケビン・マッカーシー下院議長(写真:AP/アフロ)

 4月5日、中国は清明節だった。日本で言えば春のお彼岸の祭日で、14億国民がしばし仕事を忘れて、先祖の墓参りをした。

 だが、相変わらずいきり立っている中国政府は、清明節も返上で、台湾への抗議文の作成に余念がなかったようだ。

4月5日の清明節には香港でも多くの家族が先祖の墓参りに行く姿が見られた(写真:AP/アフロ)

「米国は『一つの中国』の原則を空文化させている」

 アメリカ西部時間の同日午前10時(日本時間6日午前2時)、台湾の蔡英文(さい・えいぶん)総統が、立ち寄り先のロサンゼルスのロナルド・レーガン図書館で、アメリカ連邦議会下院のケビン・マッカーシー議長と、約40分会談した。台湾総統がアメリカ国内で下院議長と会談するのは、1979年に断交して以降、初めてのことだ。

 それだけに、中国外交部は即刻、「報道官談話」を発表した。全文は長文だが、要旨は以下の通りだ。

<最近アメリカは、中国側の厳正な交渉とたびかさなる警告をも顧みず、台湾地域のリーダー蔡英文が、トランジットでアメリカに逃げ込むのを故意に許した。そしてアメリカ政府のナンバー3、マッカーシー下院議長が、蔡と高らかに会見した。アメリカの官僚と国会議員も同時に接触した。蔡が「台湾独立」分裂の発言を発表するのに、演台を提供したのだ。(中略)

 長期にわたり、アメリカは「以台制華」(台湾をもって中国を制御する)戦略を実行している。「3つの共同コミュニケ」に違反し、台湾と公的な往来を行い、台湾に武器を売って軍事的に結びついている。そして台湾が「国際空間」を展開するのを助けるなど、引き続きラインを越えた挑発を行い、「一つの中国」の原則を不断に空文化させている。

 台湾問題は、中国の核心利益の中の核心であり、中米関係の最も越えてはならないレッドラインだ。「台湾独立」と両岸の平和安定は、水と火のように相容れないもので、台湾独立は死の道へ一直線なのだ。われわれは再度、アメリカが即刻、台湾とのすべての公的な往来を停止し、米台関係を実質的に引き上げることを止め、台湾海峡の緊張の原因を作り出すのを止め、「以台制華」を停止することを促す。過ちと危険な道を、延々と進んでいくものではない>

 アメリカのFOXニュースによれば、この会談の前、ワシントンの中国大使館からアメリカ連邦議会に向けて、A4用紙で4ページ近い「脅迫文」が送りつけられたという。「中国は決して座視しないし、結果についてはアメリカが深く後悔することになるだろう」という警告だ。