「共に民主党」の李在明代表(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国の最大野党「共に民主党」は、与党「国民の力」との政争において劣勢に回り始めた。

 国民の力が支える尹錫悦大統領は、日米との外交で成果を上げ、出席したG7広島サミットでは自由・民主主義陣営の中枢国家としてG7に次ぐ地位を確立した。またカナダ、ドイツ、EUの首脳が相次いで韓国を訪問、協力関係の強化を図った。

 一方、前任の文在寅氏の外交はどうだったか。文前大統領は北朝鮮を擁護し続け、北朝鮮の非核化意思を欧米諸国に吹聴して、北朝鮮への制裁緩和を模索した。また、米中対立の中で「米中間の中立外交」と称しつつ、事実上中国寄りの外交スタンスを取ってきた。現在の尹大統領とはまさに対照的である。

 このため、文在寅氏は欧米主要国の首脳の信頼をことごとく失っていった。

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 北朝鮮との関係について述べれば、尹政権は米国と核拡大抑止に合意した。これは北朝鮮の核開発を抑制することはできなくても、北朝鮮の核使用を抑制する効果があるだろう。北朝鮮の核ミサイル開発に対する韓国国民の警戒心は高まっており、韓国国民の7割は「韓国自身が核を保有すべき」との考えに変わっている。もはや文在寅氏の北朝鮮政策を信頼する人は少数派と言っていい。

 国内政治に目を向けてみても、民主党幹部による不正が相次いで摘発されており、国民の批判にさらされている。なにより李在明代表自身、司法当局の取り調べを受ける身である。民主党の支持率が下落し始め、国民の力への攻撃材料も失われている。また、労働組合「貨物連帯」のストが中止されるなど、民主党の支持基盤である「民主労総」の活動は行き詰まっている。これも民主党にとっては頭の痛い問題だ。