日本との関係でも、民主党陣営の旗色は悪い。元徴用工の支援団体が元徴用工の遺族に対し、補償金など受け取った場合にはその20%を支援団体に支払うことを求める内容証明を送ったことが判明した。これに関係し、民弁などの革新系弁護士会と市民団体の「歴史問題ビジネス」が問題とされ、歴史問題で政府を追及することの意図が疑問視されるようになっている。

民主党の政府との対立の中心に福島原発の「処理水問題」が浮上

 そうした中で、民主党が与党攻撃と支持拡大の材料にしようと狙いを付けたのが、福島第一原発で生じた「処理水」(韓国ではメディアも含め「汚染水」と表現している)の海洋放出問題である。韓国では放射能に汚染された処理水が太平洋に放出されれば韓国人の健康にも悪影響を及ぼすとの感情的反発がある。民主党は、国会前に「福島汚染水投機は放射能テロだ」という横断幕を掲げ、これに付け込む形で日本政府の処理水放出批判に党力を総動員している。

 民主党の一方的な福島処理水反対の動きは「第二のBSE(狂牛病)を狙った扇動だ」との批判(国民の生命に直結する問題を非科学的なスローガンで非難し、当時の李明博政権を苦境に陥れた)も出ているが、民主党は意に介さない。

 民主党が批判を強めるきっかけとなったのが、尹大統領が今年3月、菅義偉前首相ら日韓議員連盟との会談において、原発処理水の放出に関し「時間がかかっても韓国国民の理解を求めていく」と発言したとした共同通信の報道だ。

 その内容が韓国側に伝わると、会談に同席した韓日議員連盟会長の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)国会議員は即座に否定。「報道は全く事実ではない。こうした内容を報じたメディアに遺憾の意を表す」と自身のFacebookに書き込んだ。

 鄭氏によると、尹大統領は「汚染水問題は韓国国民として不安を感じざるを得ないため、時間がかかっても国際原子力機関(IAEA)の主管下で科学的かつ客観的な真相を正確に把握して知らせることが重要だ」と述べたのだという。また「汚染水問題は韓国国民の健康と安全に関する問題であるため、科学的かつ客観的な検証が必ず必要だ」とし、「韓国人専門家を招き、検証に参加させるのも一つの方法かもしれない」と会談で語ったとのことだった。

 会談の中で「韓国国民を説得していく」といったニュアンスの発言は誰からも出なかったと強く否定したのであった。