韓国では2013年から福島近隣8県の水産物の輸入が禁止されてきた。食品医薬品安全処側は「日本から入った水産物に対してセシウムやヨードなど放射性物質の検出を確認する」とし「現行輸入規制を維持する」と明らかにしている。

 それなのに、自ら福島産海産物の再輸入を取り上げ、争点化しようと躍起になっている。マッチポンプも厭わない、なりふり構わない様子は、まさに執念としか言いようがない。

文在寅政権は「IAEAの基準に沿った手続きに従うなら反対はしない」と言っていたのに

 文在寅政権時代の2021年4月、当時の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官は、福島原発処理水の放流について国会で問われ、「日本がIAEAの基準に沿った手続きに従えば、あえて反対はしない」と発言していた。

 鄭長官が提示した条件とは、▼日本政府の十分な科学的根拠提示▼韓国政府との十分な協議▼IAEA検証過程への韓国専門家の参加、だった。IAEA調査団には韓国や中国、米国など11か国から専門家が参加している。

 しかし、尹政権に交代すると民主党は韓国政府に対し無条件で「放出を阻止せよ」と要求するようになった。

 これに対し、韓国大統領室は、鄭長官が示した条件がある程度満たされたという立場である。大統領室関係者は「文政権当時の鄭義溶長官の言葉が尹錫悦政権で突然ウソになることはない」「理念でなく科学に基づくべきというのが尹錫悦政権の一貫した立場」と述べた。

 また、大統領室は視察団長を務めた劉原子力委員長は、文前大統領が任命したという点に言及し、調査の客観性を強調した。