深刻化するカスハラ被害(写真はイメージ)

(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)

労災認定基準が加わり「カスハラ撲滅元年」に

 店舗の中で従業員に土下座させたり、恫喝した挙句に暴力を振るったりと、時折目を疑うようなカスハラ(カスタマーハラスメント)が行われる様子がニュースなどで報じられることがあります。

 カスハラは、セクハラ(セクシュアルハラスメント)やパワハラ(パワーハラスメント)ほど広まっていない言葉だけに新しい概念のように受け止められがちですが、横暴な顧客(カスタマー)の存在自体は、ずっと以前から認識されていたことです。それがカスハラという言葉がつくられたことでこの問題に輪郭がつけられ、徐々に認知が広がりました。

 厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」によると、労働災害のうち精神障害に関する補償が支給決定された件数は令和4年度に710件ありました。その前年は629件、前々年608件なので年々増加傾向です。令和4年度710件のうち精神障害に至った原因の内訳を見ると、パワハラが最多で147件。セクハラも66件にのぼります。

「精神障害の労災認定基準に関する専門検討会」にて話し合われた結果、そこに令和5年度から精神障害に至る原因としてカスハラに関する項目も追加されることとなりました。今後、カスハラの存在がさらに注目されることになります。精神障害の労災認定基準の中にカスハラの項目が加わった今年は、さしずめ“カスハラ撲滅元年”と言ったところです。

 では、どうすればカスハラを撲滅することができるのでしょうか。それを考えるに際し、まず職場との関係性をひもときながら、従業員がカスハラの被害者になってしまう背景を考察したいと思います。