ストレスのたまる今の世の中、「言葉の護身術」は不可欠なスキルかもしれない(写真:アフロ)

 厚生労働省による令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」では、仕事や職業生活における不安やストレスに関する調査結果が掲載されており、そこでは25.7%の人が「対人関係」がストレスの原因と回答している。

「身に覚えのない難癖をつけられた」「指導を装って、上司がネチネチと嫌味を言ってくる」「人格否定ともとれる言葉で侮辱をされた」「陰で悪口を言って足を引っ張ろうとする」「すぐにマウントを取ろうとする」──。そんな職場での嫌がらせ行為から身を守る「言葉の護身術」とは何か。考案した弁護士の後藤千絵さんの考察。

(*)本稿は『職場の嫌な人から身を守る言葉の護身術』(後藤千絵、三笠書房)の一部を抜粋・再編集したものです。

(後藤 千絵、弁護士)

 朝、オフィスに着いた直後、突然、上司から叱責された経験はありませんか? 私は、人生の中で二度ほど、そんな経験があります。

 東京の会社で総合職として勤務していた時の話です。お昼休みに職場の友人らと一緒においしいと話題のランチに行き、談笑しながらオフィスに帰ってきたところ、いきなり上司から怒鳴りつけられたのです。

「こんないい加減な資料を出してきて、いったいどういうつもりだ!?」

 上司は、私が午前中に提出した書類を机にたたきつけるように置きました。職場の人は固唾をのんで上司と私を見守っています。

 私は今でこそ、何を言われても平然としている自信がありますが、もともと涙腺が弱く、いきなり非難されたら言い返す前に涙目になってしまうタイプの人間でした。

 その時も何が悪いのか聞くことすらせずに、涙声で震えながら、「申し訳ありませんでした……」と言うのがやっとで、いわば戦う前から白旗を上げている状態です。

 結局、上司が指摘したミスというのは、上司が指示をし忘れていただけでした。おいしいランチではしゃいでいたのも、上司の癇に障ったのかもしれません。

 今では完全にパワハラに該当すると思いますが、当時は「ハラスメント」という言葉すら聞いたことがありませんでした。いきなり怒鳴りつけられるまではいかなくても、不意打ちに近い形で叱責を受けた経験は誰しもあるのではないでしょうか?

 そんな場合、焦ってやみくもに行動するのは禁物です。

「不意打ち攻撃をされた時」に即座に対応する心の護身術をご紹介します。

カスハラへの対処を間違えるとエスカレートする恐れがある(提供:アフロ)