機械やAIと磨くこれからの創造性

大黒:私は高度経済成長期時代の人間ではありませんが、おそらく当時はまだ何をやっても新しく感じた、ということがあるのではないでしょうか。今ほど情報化社会になっていないので、知らないことによるメリットがあった。

 でも、今は検索すれば何でも情報は出てくるし、自分のアイデアを誰かがすでに考えていたこともすぐ明らかになる。すでに誰かがやったことだと分かればモチベーションは上がりません。

 そう考えると、これからの時代はかつてのやり方とは創造性の上げ方が異なるものになると思います。たとえば、機械やAIとの交流の中で一緒に創造的な発想を生み出していくというように。

 AIが人間の相棒のような形で交流できるものになる時代が間もなく実現する。AIにアイデアを投げると意見を返してくれる。こういったやり取りを通して、アイデアの新しい組み合わせを見つけていくのです。

──本書の中で、イギリスの心理学者グラハム・ワラスの「ワラスの4段階」という理論を説明しています。「ひらめきが訪れやすい人やいつもワクワクしている人、モチベーションが高い人は、特別な才能があるのではなく、4段階モデルの時間的なダイナミクスを無意識のうちに理解していて、タイミングよく各段階に切り替えている」という話です。これはどういうことでしょうか。

大黒:ワクワクしている人だって、ずっとワクワクしてクリエイティブでいられるわけではありません。クリエイティブではない時期があり、やがて、クリエイティブな時期が始まる。

 では、いつどのようにして脳がクリエイティブに切り替わるのか、そこに時間的なゆらぎがあります。この一連のプロセスを単純化して説明したのが「ワラスの4段階」です。「準備期」「あたため期」「ひらめき期」「検証期」という段階をうまく切り替えていくという話です。