ChatGPTで目的を失うお受験教育

大黒:「外発的モチベーション」とは「お金を稼ぎたい」とか「人から評価されたい」など、外からの報酬を目的とするモチベーションです。これに対して「内発的モチベーション」とは、それをやることが自然と楽しくてワクワクしてしまう知的好奇心のようなものです。

 好きだから何かをやり、その結果によって褒められて嬉しい、というように「外発的モチベーション」と「内発的モチベーション」は多くの場合共存しています。ただ、社会の構造からして、現代は「外発的モチベーション」の多い時代だと言えます。だからこそ「内発的モチベーション」を意識して行動することに意味がある。

──「偏差値を上げるために勉強するという行為は、外発的なモチベーションを誘発しやすい」「こういった外発的なモチベーションは創造性を抑制してしまう」と書かれています。お受験教育主義的になればなるほど、クリエイティビティが失われていくということでしょうか。

大黒:偏差値を追い求めるお受験スタイルの中でクリエイティビティを発揮する一部の例外のような人たちもいます。たとえば、非常にクリエイティブに問題を解く人がいます。フィンランドなどでは、そういった教育も進んでいる。

 しかし、一般的には現代の偏差値教育はひたすら合格点を目指す勉強スタイルです。ゴールに近づくためのやり方がある程度決まっていて、「いかに素早くできるか」「どれだけたくさん訓練するか」が重要になる。不確実性がかなり低い状態なのです。

 こういう競争にすごくモチベーションを持つタイプの人も存在しますが、多くの場合、これではモチベーションはなかなか高まりません。

 ChatGPTにある歴史の問題を解かせたら素晴らしい答えを出したという話もありますが、やり方が分かっていることは機械がやる時代になってきた。そうすると、これまでの偏差値教育は根本的に目的を失っていくようにも思われます。

──戦後に貧乏な中で勉強した日本人はたくさんイノベーションを起こして高度経済成長を成し遂げましたが、やがて豊かになってくると、以前より学びやすい環境なのに、なぜかイノベーションは少なくなっていると言われます。これは教育があまりにもマニュアル化されてきたことと関係があると思いますか。