岸田首相と会談するモディ首相(提供:Press Information Bureau/Pib Pho/Planet Pix/ZUMA Press/アフロ)

 3月20日、インドを訪問した岸田首相は「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)を実現させるための推進計画を発表。途上国のインフラ整備などに2030年までに官民で750億ドル(およそ9兆8000億円)を超える投資を約束した。インドを代表格とする「グローバルサウス」をいかに味方につけることができるか。中露、そして西側諸国はアプローチを強めている。

 新興国にはどのような成長性が見られるのか。インドは何を見据え、どう動いていくのか。比較政治学や国際関係論が専門で、『新興国は世界を変えるか 29ヵ国の経済・民主化・軍事行動』(中公新書)を上梓した東京大学および政策研究大学院大学名誉教授の恒川惠市氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──「本書では、先進国よりも早いスピードで経済成長を遂げ、世界経済の動向に無視できない影響力を持つようになった国々を『新興国』と呼ぶ」と定義し、29の国と地域について分析されています。どういった観点で新興国を選んだのでしょうか。

恒川惠市氏(以下、恒川):新興国という言葉が日本のマスコミで頻繁に取り上げられるようになったのは2005年頃からです。2001年に米ゴールドマン・サックスの経済アナリスト、ジム・オニールがブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字を取り「BRICs」という言葉を作った。この4カ国を、急速に経済成長を遂げる国々の中でも、特に世界経済における重要性を増している国と位置付けたのです。

 2008年にリーマンショックに端を発する金融危機があり、BRICsを中心とした新興国が危機を脱するカギを握るとして注目されました。それから、日本でも新興国という言葉が多用されるようになりました。このような経緯を考慮して、成長のスピードが早く、国内総生産(GDP)を基準にした世界経済の重要度が増している29の国と地域を特定しました。

 ただ、この29カ国以外にも、サイズはまだ小さいものの成長率が高い国はあり、新興国予備軍はグローバルサウスの中にまだまだ見られます。

──1970年からの30年間のGDPの対米比率を見ると、シンガポールは3.8倍、韓国は4.5倍と、歴史上の新興国と比べて現代の新興国はキャッチアップのスピードが早いことに特徴がある、と書かれています。なぜ、現代の新興国はすさまじいスピードで経済成長できるのでしょうか。