存続の危機に立つ地方ローカル鉄道に活路はあるのか。ムーミン列車やレストラン列車などを走らせていすみ鉄道(千葉県)の知名度を一気に高め、今はえちごトキめき鉄道(新潟県)の社長を務める鳥塚亮氏に、ローカル線の可能性を聞くインタビュー連載の最終回。地元自治体が線路を所有する「上下分離方式」による運営形態に異を唱えるなど、独自のローカル線活性化哲学を語った。
【関連記事】
◎【前編】ローカル線再生術、「客がいないから不要」を「客がいなくても必要」に変える
◎【中編】わずか1分で切符は完売、もてなしはカップ麺のローカル夜行列車はなぜ人気に
(池口 英司:鉄道ライター・カメラマン)
時速25kmで走る「白馬エクスプレス」構想も
——前回の記事で、えちごトキめき鉄道沿線の利便性を高め、安定経営に向けた仕組みづくりの話がありました。その流れで伺いますが、えちごトキめき鉄道とつながっているJR大糸線の糸魚川〜南小谷について、JR西日本は収支の厳しさから「あり方の検討」をしています。
松本と糸魚川を結ぶ大糸線は採算性の低い典型的なローカル線で、特に南小谷以北の非電化区間は、利用者が少ないといわれてきました。これをJRから分離して、えちごトキめき鉄道に経営移管するのではないか、と話題になっています。
鳥塚亮・えちごトキめき鉄道社長(以下、鳥塚氏):いずれJRからは切り離されて、もし鉄路として存続させるのであれば当社で運営することになるでしょう。糸魚川で線路がつながっているのですから。
えちごトキめき鉄道の社員には、大糸線のことを熟知している者が何人もいます。(国鉄ローカル線を廃止し第三セクター鉄道に転換されるときに支給となった)転換交付金のような補助金を頂けるのであれば、それを管理して基金とします。
大糸線は災害が多い路線といわれていますが、そもそも災害はいつ来るかわからないのだから、不必要に怯えるべきではありません。それよりも大糸線の魅力を再発掘して盛り上げてゆき、絶対に廃止してはならない鉄道だと皆に認識してもらうことです。
大糸線は糸魚川駅で新幹線と接続しており、白馬にも行くことができる路線です。こんなに魅力がある路線を廃止する必要などないのです。
時速25kmで走る「白馬エクスプレス」を運転して(笑)、お客様で賑わうようになれば、たとえ災害が起こったとしても、「それ直せ!」ということになるじゃないですか。