ローカル鉄道のある地方の田園風景は、この先いったいどのように変わっていくのか

 地方の赤字ローカル線が岐路を迎えている。昨夏、国土交通省の有識者会議「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」が存廃議論を促す提言を発表。「輸送密度1000人未満」の路線が協議入りの目安として示され、全国の地方で危機感が高まった。

 この議論の中で、自らを「廃線処理投手」「鉄道おくりびと」と表現した有識者委員がいた。名古屋大学大学院環境学研究科の加藤博和教授だ。「地域公共交通再構築元年」(斉藤鉄夫国交相)とも位置付けられる2023年。変革の行方を加藤氏に聞いた。(聞き手:河合達郎、フリーライター)

※参考:国交省有識者会議が2022年7月に発表した提言概要(https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001492228.pdf)

議事録に載った異色のニックネーム

――国交省有識者会議が出した2022年7月の提言は、全国の地方で衝撃を持って受け止められました。その会議の議事録で「私は廃線処理投手とか鉄道おくりびとと言われている人」と表現する加藤さんの発言が目を引きました。

加藤博和氏(以下、加藤氏):私自身としては「廃線処理投手」だとは考えていないのですが。鉄道廃線が決まった地域に招かれ、公共交通網を再整備する実務にあちこちで当たってきたため、そういう呼ばれ方をされるようになっただけのことです。

 私自身は「地域公共交通プロデューサー」を自称しており、どこの現場であろうと、公共交通をよりよくすることによって、地域をよくしていくことに徹しています。そのスタンスで、鉄道廃線だけでなく、鉄道を残して便利にする仕事もしていますよ。

 “ハイセン”は敗戦、すなわち、負けととらえられてしまうことが多いわけですが、鉄道廃線が一概に悪い方向だとは言えません。

 むしろ代替交通をちゃんと検討していけば、より費用が安く利便性の高い公共交通網を再構築できる場合もありえます。結果的に勝利投手になる可能性もあるのです。

――私もローカル線沿線住民の一人ですが、どうしても地域視点では、ここから鉄道をなくしていくのか、という感情が先立ちます。