本格化する議論のスケジュール感
加藤氏:問題意識を持って動き始めている自治体もあるようです。淡々と着実に取り組み始めているところほどマスコミに取り上げられません。記事になるのは、いつももめているところばかりです。
例えば、これが鉄道ではなくバスの廃線だったら大騒ぎになるでしょうか。鉄道ではセンセーショナルに取り上げられ、バスでは記事にすらならないことだってあります。バスが廃止になる方が、地域公共交通にとってよっぽど死活問題だと思いますが。
昨年末、西日本ジェイアールバスが京都府内の園福線を廃止する方針を発表しました。1939年から83年走り続けてきた路線です。
私は、この沿線の南丹市、京丹波町、綾部市の3市町と京都府が組織する公共交通の法定協議会の会長を務めていますが、廃線に伴う代替策についてこれから十分に検討を進めていく方針ですし、西日本ジェイアールバスにも強くお願いして、検討のために廃止を少し待っていただけるようにしています。
バスではそのようにやっているのです。鉄道だって同じようにやればいいのです。
立場を守るために時機を見て突然言い出すのではなく、公開原則の法定協議会において情報をすべてさらけ出し、本音で言い合う。公明正大に、着々と準備していけばいいと思います。
――今年は鉄道でもこうした動きが出てくるでしょうか。
加藤氏:出てこないと困ります。それに、地域が主体的に動いた方が絶対に得です。というのも、地域公共交通の再構築に対する岸田内閣の思いが相当強いようなのです。与党も、国交省も、JRも、そろって機運が高まっています。
長年この世界に身を置く者としては、昨年6月に閣議決定された「骨太の方針」に「地域公共交通」の6文字が入ったこと自体がまず驚きでした。今まではかすってもいない、相手にもされていなかったのに、です。今年度の補正から新年度の当初にかけての予算も、これまでと比べ物にならない額になる見通しです。
スケジュールとしては今、有識者会議が昨年7月に出した提言書を受けて、国交省の審議会で法改正や補助制度見直しの検討が進んでいます。私もメンバーの1人ですが、1月中には取りまとめを出す方針です。
これに従って春に法案が通常国会に提出され、審議の結果可決されれば、今秋にも施行されることになるでしょう。