寺子屋の開講で明かりが灯った樽見鉄道・神海(こうみ)駅の旧駅舎

 人口減。高齢化。地方創生。東京一極集中。過疎化。担い手不足……。永田町界隈で地方の苦境にまつわる記事を書きながら、もう一人の自分が突き付けた「おいおい、ところであんたの田舎はどうなのよ!?」という問い。そいつに寄り切られる形で11年勤めた朝日新聞社を辞め、地元に戻り、はや1年が経った。

 地域でやれることは何だろうか――。そんな思いを原点に、自らの問題意識に従っていくつかのことに着手してみたこの1年。さて、半か丁か。地域の力になりながら、自らの足場を築くという両立はできるのか。もがき、あらがう途中経過を、ここに記録する。2回目の今回は、「教育環境格差」についてのお話。(河合達郎:岐阜県本巣市地域おこし協力隊、フリーライター)

◎第1話:朝日新聞の元政治部記者が地域おこし協力隊として地元に戻り気づいたこと(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70310)

民間の塾産業なんてまず来ない

 39人。

 人口減が進む地域の状況を対外的に説明する時、この数字はとてもよく伝わる。ここ、岐阜県本巣市の山あいにある小学校の全校生徒数だ。前年度の44人から5人減り、今年度はいよいよ30人台に突入してしまった。「小学校1クラスを40人から35人に」と改正された義務教育標準法が、「どこの国のできごとですか?」というふうにさえ感じる。

 そんな地域で暮らし始め、半年ほどが経った2021年秋。我が子のクラブ活動で訪れた週末のとあるグラウンドで、一人のお母さんにこう声をかけられた。

「子どもの勉強を見てくれる塾があるといいんだけど。やらない?」

 教育にかかわるということは、それまで想定したことすらなかった。自分にとって藪から棒というようなお声がけに、その場での返事は「いやぁ……。そんなお悩みがあるんですねぇ」と濁ったものになってしまった。相手が「やるつもりはございません」と受け取るのには、十分な返事になっていたと思う。

 だが、この「塾がない」という事態は気になった。子どもが少ない。ますます減っている。この状況の地域に、民間の塾産業はまず参戦しようとは思わない。

山あいに位置する岐阜県本巣市の北部地域