「イクメン」は「父親」に脱皮できるだろうか(写真:アフロ)

「イクメン」という言葉が定着して久しいこのごろ。国も、育休の提供を積極的に企業に呼び掛けている。しかし、「父親の時間」を拡大された男性たちは、はたして「親」として効果的に機能しているのだろうか。

 父親だからできる子育てとは、どのようなものなのか。また、子育ての本質を理解しないイクメンたちは、子どもたちにどのような悪影響を与えてしまうのか──。『イクメンの罠』(新潮新書)を上梓した、MP人間科学研究所代表・榎本博明氏にお話を聞いた。(聞き手:あきばた、記者兼プロカメラマン)

※記事の最後に榎本博明さんの動画インタビューが掲載されています。是非ご覧下さい。

──「イクメン」という言葉を耳にする機会が増えました。政府は男性の育児休暇取得率の目標を30%に引き上げるなど、男性の育休取得を促進する法改正も進められています。男性の育児参加が一つのブームとなりつつある昨今の流れについて、先生はどのようにお考えでしょうか。

榎本博明氏(以下、榎本):「ブーム」というのはとかく過剰になったり、歪んだりしやすいものです。特に行政主導で行うと、まず数値目標ありきで始まってしまいます。そうなると、数値を上げることだけに着目して、中身がスカスカの状態で運用することになってしまう。これは、あまり良くないことだと思います。

 本書の中でも述べましたが、どうやって子育てをすればいいのかわからないのにただ休みだけを取ればいい、というのはそもそも間違っています。

 現状でも、育休を取っている父親に対して、母親が「結局役に立たないじゃないか」というような不満を持っているケースもあるし、逆に稼ぎ頭として仕事に注力している父親が、平等に育児をやれと圧力をかけられることによって疲弊してしまうパターンもある。時間的にも能力的にも、平等に育児を行うことが現実的ではない場合もあるのです。

「よそはよそ、うちはうち」ではないですが、外国だと周りを気にせず、我が家流にこだわって育児をする方も多い。だけど、日本人は世の中の流れに合わせる素直な人が多い。家庭の数だけ育児がある中で、この“素直すぎる性質”は少し問題ではないか、とも感じています。

──会社から育休をもらっても何をすれば良いのかわからず、ただ休暇として消化したという話を耳にします。「休暇を与えるから育児に参加しなさい」というのは制度としてそもそも無理があるのでしょうか。