旗を立てて動き出した結果

 今、5月の寺子屋開講からちょうど1か月が経った。午後5時から8時まで開けっ放しにしたこの空間に、小中学生5人が通ってきてくれている。人材不足の課題は、各科目の解説が充実した オンライン教材で補ってみることにした。ベースの講義はその道のプロに任せ、「次は何をするべきか」といった進捗管理や個別の疑問への回答には現場にいるこちら側が対応する。そうすることで、子どもたちの学習と寺子屋の運営の両面で効率が上がると考えた。

 ハード面は、名古屋・大須で、中古パソコン5台を5万6892円で調達。パソコンに強いもう一人の協力隊員、青山昇永さんの助言が効いた。

 そして、協力者はもう一人。開講の案内を聞きつけて、「手伝います」と名乗り出てくれた青年。隣町の山あい出身の彼自身、中学時代に塾に通えず、苦い思いをしたのだと教えてくれた。

「それって、どれくらいのニーズがあるの?」

 途中、ある方からこう尋ねられたこともあった。当然の疑問なのだろうが、違和感も覚えた。この小さな地域の中で、果たして何人が集まれば「ニーズが高いね」と納得してくれるのだろうか。

 やらない理由はいくらでもある。並べればキリがなかった。でも、一人のお母さんが実際に抱える悩みが出発点だということが大きかった。やらなければ、その悩みは悩みのままであり続けることになってしまう。

 旗を立てて動き出してみる。その大切さを身に染みながらの開講だった。

寺子屋の開講を伝える案内チラシ

 この地域にいると、「もう隣の小学校と一緒にした方が、子どもたちにとっていいんじゃないか」という声を聞くことがある。正直、その答えはよくわからない。

 ただ、地域社会にとっては負の側面が大きいのではないかと感じる。市町村合併や郵政民営化の議論と同じように、「役所・郵便局があるから人がいる、だからまわりに店がある」という、地域の核としての機能が備わっているからだ。

 統廃合の行方を気にしながら、ますます縮小していく小学校を傍観するだけではおもしろくない。寺子屋という取り組みを通して、盛大にそれにあらがってみようと思っている。