朝日新聞を辞め、地域おこし協力隊として地元に戻った

 人口減。高齢化。地方創生。東京一極集中。過疎化。担い手不足……。永田町界隈で地方の苦境にまつわる記事を書きながら、もう一人の自分が突き付けた「おいおい、ところであんたの田舎はどうなのよ!?」という問い。そいつに寄り切られる形で11年勤めた朝日新聞社を辞め、地元に戻り、はや1年が経った。

 地域でやれることは何だろうか――。そんな思いを原点に、自らの問題意識に従っていくつかのことに着手してみたこの1年。さて、半か丁か。地域の力になりながら、自らの足場を築くという両立はできるのか。もがき、あらがう途中経過をここに記録する。(河合 達郎:岐阜県本巣市地域おこし協力隊、フリーライター)

 2021年4月1日、岐阜県の南西部に位置する本巣市役所を訪れた。朝日新聞社を前日付で退社し、本巣市から「地域おこし協力隊」としての委嘱を受けるためだった。

 地域おこし協力隊は、条件不利地域の課題解決や担い手育成を目指した総務省の制度。全国各地の地方自治体が主体となり、地域独自のミッションを設定して活動する人を募る。本巣市は「遊休資産(空き家や遊休農地、山林等)の活用による地域活性化」というミッションを掲げ、希望者を募集していた。

「冗談かと思ったよ」

 委嘱式に現れた藤原勉市長は開口一番、緊張するこちらを和ませるようにそう声をかけてくれた。キャリアチェンジや地方移住は全国のあちこちでありふれているが、受け入れ側の個別自治体にとっては、まだまだレアケースなのだと感じた。

「キャンバスは用意するが、そこに何を描くかはあなた次第」
「20年、30年と続くことをやってほしい」

 そんな言葉が胸に残った。

 そもそも、地元に戻るということを考え始めたのは、そこから5年ほどさかのぼる。