文・写真=村井美樹 編集協力=西垣一葉(春燈社)

1日3往復の秘境ローカル線「木次線」

 鉄道の魅力や楽しさをお伝えする本連載。ご紹介したいのは、島根県の宍道駅から広島県の備後落合駅までを結ぶ、JR西日本の「木次線」です。トロッコ列車の「奥出雲おろち号」や珍しいスイッチバックなど、見どころが満載! じつは、廃線の危機に瀕しているのですが、秘境ローカル線の醍醐味をぞんぶんに味わえる路線なので、ぜひとも皆さんに知っていただきたいのです。

「奥出雲おろち号」

 今回、私が木次線を訪れたのは「鉄道漫画展@奥出雲」のオープニングセレモニーに参加するためだったのですが、その話はのちほど。まずは、木次線のスタンダードな楽しみ方をお伝えします。というのも、木次線の出雲横田駅〜備後落合駅間は1日に3往復しかないという、驚くほどの本数の少なさ! 乗り遅れると大変なことになるので、事前にしっかりと旅のプランを立てておくと安心ですよ。

旅のお供は「奥出雲おろち号」と同じ青のボーダーのこけし

 おすすめなのは、木次駅を10時08分に出発する「奥出雲おろち号」に乗車するプランです。日程によっては、出雲市駅から8時45分に出発する便もあって便利なのですが、この便がない日は、出雲市駅から宍道駅まで山陰本線に乗ります。宍道駅からは木次線の普通列車で木次駅まで行き、「奥出雲おろち号」に乗り替えることになります。

 木次駅を出発し、途中で珍しい三段式スイッチバックを体験しながら、そのまま終点の備後落合駅へ。ここで20分ほど停車したあと、折り返し運転の「奥出雲おろち号」に再び乗車。亀嵩駅など観光したい駅で途中下車し、その後は普通列車で宍道駅まで戻ってくるというコースです。(宍道駅からはタクシーで約12分ほどで出雲空港に行けます。)

人気の高い寝台特急「サンライズ出雲」

 また、出発時間が早いので前泊すると安心です。たっぷり出雲を満喫したいなら、たとえば東京駅から寝台特急の「サンライズ出雲」に乗り、朝、松江駅で降りて松江城を観光。

現存する12天守のうちのひとつであり国宝の松江城

 山陰本線と一畑電車を乗り継いで出雲大社前駅へ。出雲大社を参拝して、その日は出雲市駅付近に宿泊し、翌日、「奥出雲おろち号」に乗ってさらに奥出雲へ、という旅程もおすすめですよ。

出雲大社 拝殿 写真=アフロ

 

引退間近!トロッコ列車「奥出雲おろち号」

木次駅に入線してきたおろち号 提供=やすこーん

 乗車する「奥出雲おろち号」は、マリンブルーと白のカラーリングに星を散りばめたデザインが爽やかでカッコいい!ヘッドマークには出雲神話に登場するヤマタノオロチが描かれています。このデザインは島根デザイン専門学校の学生さんが手がけたもので、神秘的な宇宙空間を走る銀河鉄道をイメージしているそうです。

トロッコ車の木製シートとテーブル 提供=やすこーん

 トロッコの車内はウッディなシートやテーブル、ランプの照明がレトロな雰囲気で、ガラス窓のない車窓から大自然を楽しめます。吹き抜ける風が気持ちいい!

 さらに、トンネルの中に入ると、まるでヤマタノオロチが現れたかのように天井のイルミネーションが光ります。暗いトンネルの中でも楽しめるような演出が嬉しいですね。

「奥出雲おろち号」は、緑の木々の中を抜けていくのですが、トロッコの窓から葉っぱが入ってきて、勢いよくバチバチと当たったりして、「イタタっ!」となることも。雨が降ったあとに乗車すると、葉っぱからの水滴がビシャビシャとかかったりもします。これがワイルドで他のトロッコ列車ではなかなか味わえない面白さなんですよね。このスリルをぜひ体験して欲しいです。窓辺に旅のお供のこけしを置いておくと、風に飛ばされたり水滴が飛んでくるので、ずっと手に持ってました(笑)。

 悪天候の時など、トロッコに乗れない場合は「控え車」の座席も用意されているので安心ですよ。

控え車の車内 提供=やすこーん

 また、車内ではグルメも充実。焼鯖棒寿司&稲荷寿司、仁田牛べんとう、笹ずし、そば弁当、アイスクリームやクリーム大福など、車内販売や予約をすれば駅まで届けてくれるサービスもあるので、ぜひ「奥出雲おろち号」のホームページをチェックしてみてくださいね。

 こんなにカッコよくて楽しい「奥出雲おろち号」ですが、じつは2023年度に引退することが決まっています。予約が取りづらい状況になっているようですが、乗れるのは今が最後のチャンス。ぜひチャレンジしてほしいと思います。