「鉄道漫画展@奥出雲」が開催中

 ここまで木次線のスタンダードな旅をご紹介してきましたが、今の期間にぜひ訪れてほしいのが、冒頭でも触れた「鉄道漫画展@奥出雲」です。三井野原駅が最寄りの「奥出雲 鉄の彫刻美術館」で行われているこのイベントの仕掛け人は、江上英樹さん。私も登場させていただいた実録・鉄道旅漫画『鉄子の旅』の元編集長です。

 江上さんは大のスイッチバック好き。木次線が廃線になったら日本最大級のスイッチバックも失われてしまいますから、存続させるために「まず出雲坂根の知名度をあげていこう」「ここに貴重なスイッチバックがあるんだよと世間に知ってもらおう」という思いで、鉄道漫画展のクラウドファンディングを立ち上げられました。

 私も支援を呼びかけて応援させていただき、鉄道漫画展が無事開催されることに!そのオープニングセレモニーに参加させていただいたわけです。

 会場の「奥出雲 鉄の彫刻美術館」までは、三井野原駅から徒歩15分。会場に向かう前に堪能してほしいのが三井野大橋からの絶景です。鉄道漫画展の会場に近い三井野原駅は、スイッチバックが行われる出雲坂根駅の隣の駅。この橋から自分たちがスイッチバックしながらジグザグに上ってきた景色が一望できるのです。

 出雲坂根駅がすごく小さく下のほうに見えて、標高差も実感。出雲坂根のスイッチバックのダイナミック感、イリュージョンといわれる訳がすごくよく分かりますよ。

「鉄道漫画展@奥出雲」の会場では、鉄道をテーマにした漫画が勢揃い。漫画をパネル展示したものや、実際に漫画を手に取って読めるコーナー、松本大洋さんの幻の漫画の原画も!

 また、展覧会の最大の目玉として、出雲坂根スイッチバックの巨大ジオラマを見ることができます。このジオラマを見ると「あ、スイッチバックってこういう構造なんだ」って、よく理解できますよ。

 このジオラマ、なんと江上さんの手作り! まだ完成していなくて、漫画展の期間中にどんどん進化しています。リアルタイムのジオラマの変化を見たい場合はぜひ公式Twitterをフォローしてみてください。

どんどんジオラマが進化して、緑も増えていっています 提供=江上英樹

  期間中はたいてい江上さんも常駐していらして、スイッチバックの解説をしてくれるそうです。

提供=江上英樹

 江上さんのすごいところは、実際に出雲横田に住んでしまっているところ。木次線の定期券を買って会場まで通ってらっしゃるんです。

出雲横田駅は出雲大社のような作りになっています

 木次線の定期券を持っていること自体、なかなかレア。それだけスイッチバックを存続させたいという思いの強さが感じられますよね。「鉄道漫画展@奥出雲」は11月23日(祝)まで開催されているので、ぜひ足を運んでほしいです。

 来年度、「奥出雲 おろち号」が引退してしまうと、木次線は乗降客がますます減って廃線がより現実的に。本数が少ないので地元の方の利用があまりないのは仕方のないことなのですが、鉄道の要衝だった備後落合駅や、とても貴重な出雲坂根のスイッチバックを簡単になくしてしまっていいのだろうかと切実に感じています。

 鉄道の歴史や文化を感じるうえで、鉄道遺産としてなんとか残せないものなのか……。

 今回、永橋さんや江上さんの熱い思いにも触れ、私も少しでも力になりたいと考えています。とても魅力にあふれる路線なので、皆さんもぜひ訪れてみてくださいね。