えちごトキめき鉄道は、JR西日本が長らく保管していた建築限界測定車「オヤ31」を譲り受けた。針状の爪を車両から飛び出させて、線路の周囲にある建築物や構造物が車両に接触しない範囲(建築限界)に収まっていることを確認する試験車両だ。「花魁のかんざし姿」のようにみえるため、「おいらん車」とも呼ばれる。こうした鉄道遺産も展示などに活用し、鉄道ファンの人気に応える

JRの強みは運行より路線の維持管理

鳥塚氏:それを、その町の歴史を知らない観光客が、面白がって写真を撮るような、それが観光の正しい姿とは思えません。私は、ローカル線の活性化の方策に観光事業を挙げていますけれど、あくまでも地元の人と歩調を合わせながら進んでゆくことが、鉄道会社にまず求められる大切な姿勢であると考えています。

——ローカル線の経営は、とても難しい時代になりました。

鳥塚氏:JRさんがよく口にするのは、ローカル線を上下分離したとして、沿線の自治体が、その下の部分を持って下さい。つまり、線路の維持管理をやって下さい。自分たちは上の部分、つまり、列車を運行します、ということなのですが、JRは列車を走らせて、その路線をダメにしてきていると言わざるを得ません。

 それが日本のローカル線の現状です。けれどもJRは、線路を維持管理するノウハウは蓄えている。だからJRが下(路線の維持管理)をやり、他の会社が上(列車の運行)をやる。これが本来あるべき上下分離の姿ではないでしょうか。

 上を担当するのは、旅行会社でも良いし、どこかの私鉄でも良いでしょう。福島県の豪雨で大きな被害を出した只見線を復旧させるのに福島県がお金を出しました。このお金を出す条件は、只見線を被災前の状態に戻すということです。

 では、被災前に只見線でどのような運転が行われていたのかといえば、1日に3往復の列車が運転されていただけです。ということは、これから1年後、2年後に、「県があれだけお金をかけて、1日に何人が利用しているのですか?」という話になります。