「宇都宮ライトレール」が事前の予想を上回る勢いで利用者数を伸ばしている(写真:松尾/アフロ)

栃木県宇都宮市の次世代型路面電車(LRT)の利用者が9月12日、開業から1年余りで500万人に到達しました。予想より約3カ月も早く、利用者の増加も加速。延伸計画やそれに伴う中心市街地の再開発計画も具体化してきました。LRTはコンパクトな交通機関として脚光を集めており、他の地域でも導入や新設の計画・構想が進んでいます。世界の動向も交えながら、「LRT」をやさしく解説します。

フロントラインプレス

宇都宮ライトレール、事前の予測を上回る大成功

 LRT「宇都宮ライトレール」の宇都宮芳賀ライトレール線が開業したのは、2023年8月26日のことです。路面電車の新規開業は国内では75年ぶり。約684億円を投じ、宇都宮駅東口―芳賀・高根沢工業団地間の14.6キロを開業させました。沿線にはキヤノンやホンダなどの工場も立ち並び、LRTの開業前には「車がないと通勤できない」「大渋滞がひどい」といった問題が生じていました。

 100万人の達成は開業から78日目の2023年11月11日でした。その後、利用者が100万人ずつ上積みされる期間は、84日間(200万人)、77日間(300万人)、73日間(400万人)、72日間(500万人)と次第に短くなっています。現在は1日あたりの利用者がおおむね、平日は1万5000人~1万8000人、土日祝日は1万人~1万1000人で推移。いずれも事前の予測を大きく上回っています。

(図:フロントラインプレス作成)
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 佐藤栄一・宇都宮市長は開業1周年を目前にした500万人達成前の記者会見で、「(2024年)7月期には過去最多の約44万人が利用した。開業によって(市民の)生活行動の変容につながっている」などと言及。ライトレールの開業で沿線の活性化や住民のライフスタイルは大きく変わったとし、次のような指標を示しました。

◎2012年と2024年を比べると、沿線の人口が約5000人増加
◎沿線の地価は商業地で約6%、住宅地で約11%上昇
◎開業の前と後に実施したアンケート調査によると、利用者の通学や通勤に関する満足度が58ポイント増加して76.1%、買い物や通院などの満足度は59ポイント増加して86.7%に

 沿線の工業団地では企業の新規投資が相次ぎ、その額は少なくとも1100億円に上るとされています。小学校では児童数が増え、全国の自治体関係者などによる「LRT先進地・宇都宮」の視察も途切れません。開業以降、その数は7000人以上とされています。

 こうしたなか、宇都宮市は2030年代前半にもLRTをJR宇都宮駅の西側に約5キロ延伸させる計画を具体化させています。実現すれば、繁華街の中心を貫く大通りに新しい路面電車が走る一方、路線バスは中心部を迂回。歩行者とLRTが優先する街ができあがります。構想では、東武百貨店宇都宮店の移転・改築やライトレールの東武線乗り入れも浮上し、繁華街の様子は一変しそうです。

「次世代型路面電車」と呼ばれるLRTは、「環境や弱者に優しい」「クルマ社会への反省から復権してきた」などと言われています。実際には、どんな乗り物なのでしょうか。