LRTのメリットは建設コストが安いだけじゃない

 LRTはLight Rail Transit(ライト・レール・トランジット)の略称です。道路に敷設されたレール(軌道法上の「軌道」)を車両が走る点では従来の路面電車と同じですが、①車両が大きく改善され、従来の路面電車よりスピードアップが可能、②車内に段差のない低床車両を使用しており、車椅子やベビーカーの利用者、高齢者といった人々も利用しやすい、③走行時の騒音や振動が低く快適、④郊外に出れば、鉄道専用線(鉄道事業法上の「鉄道」)を走行することも可能――といった特徴があります。

 また、LRTの利点は、地下鉄や一般の鉄道よりも格段に建設コストが少ないことだとされています。

 国土交通省などの資料によると、新線1キロあたりの事業費(車両費を含むケースもあり)は、宇都宮ライトレールは約47億円でした。これに対し、計画路線では、主に地下を走るJR東日本の「羽田空港アクセス新線」(5.0キロ)が約600億円、大阪メトロの「中央線延伸線」(北港テクノポート線、3.0キロ)が約328億円。近年の開業済み路線では、「相鉄・東急直通線」(羽沢横浜国大―日吉、10.0キロ)が約291億円、福岡市営地下鉄の「七隈線延伸」(天神南―博多、1.6キロ)が約419億円などとなりました。

 単純な比較は難しいですが、LRTの事業費は鉄道や地下鉄の数分の1から十数分の1にとどまっています。

 単に安価なだけでなく、①工期が短く早く開業できる、②線路の幅(ゲージ)が同じであればJR線や地下鉄線などに相互に乗り入れが可能、③車両編成を長くし、高頻度で運行すれば、輸送力が地下鉄とほぼ同じになる、といったメリットもあります。地下鉄などとは異なりホームにたどり着くまでの距離が短く、すぐに乗り場に着ける点も魅力です。

 LRTは当初、既存の路面電車の路線を使い、車両を入れ替え、電停をLRT向けに整備するなどの形で導入が進みました。2006年に開業した富山市の富山ライトレールをはじめ、広島電鉄やとさでん交通(高知県)などでも乗り降りが簡単にできる「低床車両」「超低床車両」を採用しています。そうしたなか、路線の全面的な新設も含めてLRTに乗り出したのが宇都宮ライトレールでした。

 路面電車を定義付けている軌道法は100年以上も前の大正10年(1921年)にできた古い法律で、最高速度も時速40キロ以下にしなければならないといった縛りがあります。それでもLRTに注目が集まるのは、都市再生や高齢化時代の交通ネットワークの形成といった観点などからも大きな魅力があるからでしょう。