パリの地下鉄でなにがあった?(写真:Hadrian/Shutterstock)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 少し前のことだが、ネット記事のこんな見出しを見て、いつまで経ってもつまらないことをする連中は後を絶たないのだな、と思った。

 3月28日付の「フランスで“人種差別”受けた24歳ミス東大がしみじみ…『日本はやっぱり一番だね』」という見出しである(2025年3月28日、Sponichi Annex)。

 しかし内容を読んでみると、この記事がなんだか要領を得ないのである。

 2020年度のミス東大でグランプリを獲得し、現在、現役東大院生でありながらタレント活動をしている神谷明采(24)は、2月下旬から1か月間パリに滞在していた。

 彼女は3月17日に、エッフェル塔の前で撮影した写真をアップし、「パリ生活4週目突入。アジア人カースト最下位を痛感してます」と投稿した。

 まず、この「アジア人カースト最下位を痛感してます」という意味がわからない。最初は、全アジア人のなかで日本人が最下位だということかと思ったが、そうではなく、どうやらすべての人種のなかでアジア人が最下位だといいたいらしい。

 神谷になにがあったにせよ、いずれにしてもわけのわからん結論である。

差別だったのか?

 いったい神谷が具体的にどんな被害を受けたのかというと、「地下鉄の改札で、大音量で耳元で音楽流された時は恐怖で固まってしまった。その姿を見て、大爆笑された」というのである。それで「アジア人差別は根強い」と記している。

 また「普段は真っ黒のダウンの下にバッグを全て隠して、チャックを上まで閉めて、下向いてできるだけ目立たないように歩いています。スマホとエアポッズは駅では絶対に使わない。それで襲われたり揶揄われたりするんだよ⁈ 日本の友人たちも同じ目に遭っています」と訴えている。

 まず耳元で大音量の音楽を流されたという状況が不明である。いったいどうやられたのか? 「大爆笑」されたというが、そいつはただの変人ではないのか。それにダウンの下にバッグ等すべてを隠すというのも胡乱である。

 いずれにせよ、神谷は人種差別に遭ったのではなく、なぜだかわからないが、ただからかわれただけではないのか。