(歴史家:乃至政彦)
◉古典を読む(1)宇宙戦争と外星人・かぐやの無念(前編)(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72138)
流刑に処されていたかぐや姫
物語が進むと、かぐや姫が「月の都の人」だという驚愕の事実が明らかにされる。そしてかぐや姫は翁に「(初め竹の中に隠れていたのも、天上界における)ある約束事のため、地上へと一時的に下されたものです」と、告白する。
ただし、かぐや姫には月の時代の記憶があまりなく、「かの国の父母の事もおぼえず」という。女児のうちに地上へと配流されたかぐや姫にすれば、月の都や実の父母よりも、育ての親である老夫婦への親しみが勝っていた。だから「わが身が“変化の物”(竹から生まれたヒューマノイド)であっても、あなたたちは私にとって実の親(も同然)です」とその思いを伝えている。
ところで、かぐや姫が地上へ配流された「約束事」とは何だろうか。
これはこのあと迎えに来る月世界の者たちの言葉によって明らかにされる。
そうして3年後、ついに月からやってきた「王とおぼしき人」は、翁と直接対話して、「かぐや姫は、罪をつくり」て、20年余りもの間、「賤しき」老夫婦(翁と媼)のもとにいたのであり、それが「罪の限り、果て」たので、迎えにやってきたと説明する。
つまりかぐや姫は「罪」があって地上界に送られたが、刑期(「罪の限り」)を終えたので迎えにきたというのである。