実は異なる勉強と研究

──著書の中でも「自分は勉強が苦手だった」と書いていますが、今の立場はその頃とは真逆な印象があります。

大黒:私の中ではあまり変化はありません。子供の頃から数学の教科書を自分で読み進めたり、音楽理論の本を読んで和声法の音パズルを解いてみたり、将棋をしたり、知的好奇心は強かったと思います。

 ただ、いわゆる勉強と研究は逆のことをしていると思うのです。勉強というものは、教科書の中のことをどれだけ正確に理解して記憶することができるかで測られますが、研究は教科書の枠組みを超えて、ゼロからイチを生み出す作業です。

 私は教科書に書いてあることを疑うことが多かったし、一度世間で知られたことをなぜ何度も勉強して確認する必要があるのだろうと疑問を持っていました。そういう姿勢だと憶えも悪い。

 教科書を神のごとく信じて自己洗脳をかけることができるタイプは身に付くのも早いと思いますが、そうじゃない環境や意識の中で育った時に勉強は苦手になるのでしょうね。今でも勉強や暗記は苦手です。