(廣末登・ノンフィクション作家)

 筆者は、およそ20年間にわたり暴力団研究に従事してきた。さらに、2018年からの2年間は、福岡県更生保護就労支援事業所長として、暴力団離脱者や刑務所出所者の就労支援や、受け入れ事業所の開拓を行った。

 そこで苦労したのは、就労定着率の低さであった。本稿では、継続就労の理由を知るために試みた社会調査の結果から、継続就労者が多い企業で働いている従業員の本音を紹介する。

福岡県の刑務所出所者の就職率は約70%

 2018、2019年当時、一年間に就労支援の対象となる者(以下、対象者)は、100~120名。就職率は平均して約70%を維持したが、3カ月同じ職場で働く者は十数名に過ぎなかった。

 ここでいう職場とは、殆どが、法務省の保護観察所に登録している「協力雇用主」と呼ばれる事業所である。したがって、ある程度は、罪をおかした者の背景や特性を理解し、一般の事業所と比べ、雇用に際して「即戦力」を求めない雇用主である。

3カ月勤続できる者は十数名

 当時、筆者は、就労継続を最低3カ月と考えており、「3カ月表彰制度」を新設した。これは、同じ職場で就労から3カ月経過した者に対して表彰を行い、賞状と副賞を手交するというものだ。表彰は、自己肯定感を高めるなど一定の効果が見られたものの、100名を超える就労支援対象者の中から、該当する者が年間に僅か十数名しか出なかった。

 継続就労が難しい理由につき、あれこれ考えてみたが、個人の素質なのか、雇う側に問題があるのか判然としなかった。しかし、いくつかの事業所では、入社した者が3カ月どころか、1年以上の長期にわたって勤続しているという事実もあった。