©2022「夜明けまでバス停で」製作委員会

 記憶に新しい「幡ヶ谷バス停殺人事件」。コロナ禍の最中、渋谷区幡ヶ谷でホームレスと見られる女性が近隣に住む男性に殴り殺された。女性は大林三佐子さん(64)。亡くなる数ヶ月前までスーパーの試食提供係のパートをしており、身なりは綺麗でホームレスには見えなかった。だがコロナで職を失い、家賃が払えず、アパートを追い出され、亡くなった時の所持金はわずか8円。

 半月後、追悼する集会とデモが開かれ、170人が参加した。なかには「彼女は私だ」とプラカードを掲げた女性もいた。決して他人事ではない。コロナ禍、あっという間にたくさんの人が職を奪われ、住む場所を奪われ、人権を奪われた。彼女のように命まで奪われてもおかしくなかった。

ごくごく普通に生活していた女性の日常が…

『夜明けまでバス停で』はこの事件をモチーフに、もしかしたら明日、誰しもが置かれるかもしれない「社会的孤立」を描いている。

「今、これを世の中に発信しなければ」という思いから、高橋伴明監督が早くも映画化を実現。デビュー作のロケハン中に浅間山荘事件が起こり、「こんなことをしていて、いいのか」と負い目を感じていた監督らしく、作品にはなぜ、彼女が死ななければならなかったのか、私たちが今一度、考えなくてはならないメッセージが込められている。

©2022「夜明けまでバス停で」製作委員会

 北林三知子はフリーのアクセサリーデザイナー。だが、それだけでは生計を立てられず、夜は居酒屋で住み込みのパートとして働いている。

 店の同僚であるフィリピン人女性はバブル期、ジャパゆきさんとして来日したが、相手の男性に逃げられ、次に子どもがいなくなり、今では食べ盛りの孫を抱え、店から何度、禁じられても、手をつけていない料理をこっそり持ち帰らないと食べていけない。

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