(山田敏弘・国際ジャーナリスト)
コロナ禍の2021年6月、一風変わったドキュメンタリー映画の上映が開始された。まず映画の公式サイトに掲載されている作品の説明文を紹介したい。
“池田英彦・40歳・四肢軟骨無形成症
スキルス性胃ガンステージ4・趣味:ハメ撮り
身長112センチの青年が人生最後の2年間を凝縮した
初主演・初監督作にして遺作!”
この説明文を読んで混乱した人もいると思うので、「翻訳」を試みるとこうなる。
「通称コビト症の四肢軟骨無形成症という障害をもって生まれた身長112センチの池田英彦氏が、末期がんを宣告され、人生最後の2年間で自らを主役にした映画を作るべく、女性とのセックスを記録していく――」
これだけでもう普通のドキュメンタリー映画ではないのが分かるだろう。この作品――『愛について語るときにイケダの語ること』――は単なる「下ネタ」映画ではない。自ら2年にわたってカメラを回したイケダは、20年来の親友で本作のプロデューサーでもある真野勝成氏に協力を求めた。TVドラマ『相棒』シリーズや映画『デスノート Light up the NEW world』等の脚本を手掛けてきた真野氏に、「僕が死んだら映画を完成させて、必ず公開してほしい」という遺言を残し、そして逝った。真野氏は、60時間におよぶ動画を託された。
初主演・初監督作品にして遺作
こうして真野氏の手で完成された作品は、2021年6月に東京で公開されると大きな話題を呼び、大手新聞にも取り上げられるようになる。さらに、この映画を見て、多くの個性的な面々が応援コメント(公式サイト:https://ikedakataru.movie/)を寄せてくれた。映画監督・原一男、メディアアーティスト・落合陽一、漫画家・しりあがり寿、エッセイスト・能町みね子、作家・中村うさぎ、などである。
この『愛について語るときにイケダの語ること』は東京での公開終了後に、全国各地で上映されてきたが、再び東京に戻ってきた。11月26日からアップリンク吉祥寺で2週間の「凱旋アンコール上映」が行われることが決まったのだ。
同作品とともに東京に戻ったプロデューサーの真野氏に、ネタバレにならないよう、なるべく内容は避けて「イケダ」について話を聞いた。