ユージン・スミスが撮った衝撃写真
米国人写真家、ユージン・スミス氏の一枚の写真、「Motoko in her bath」(入浴する智子と母)が世界中の脚光を浴びてから50年。
そのスミス氏が水俣の水銀中毒(水俣病)に苦しむ犠牲者たちの実像をファインダー越しに見つめ、社会正義とは何かを追及したジョニー・デップ主演の映画「Minamata―ミナマタ」がベルリン国際映画祭で上映されてから9カ月。
日本や欧州各地で一般公開され、大きな反響を呼んでいる。
日本からも豪華キャストが参加し、熱演したこともあって映画レビューでは「名優デップだからこそ表現し得た」と絶賛する向きもあった。
この映画の起点が「海外から見つめる瞳」であり、ハリウッドが「ミナマタ」を取り上げる意義を評価していた。
(もっとも、水俣市は「制作意図が不明だ」とこの映画の後援を拒否している)
だが、この映画は肝心要のハリウッドではお目見えしていない。それどころか「お蔵入り」の危機に瀕している。
それだけではない。今後の成り行き次第ではデップがハリウッドから永久追放されるかもしれないのだ。
皮肉なことだが、ハリウッドでは最も出演料の高いスーパースター、デップ主演ゆえに国際的な注目を集めた映画だが、そのデップゆえに「お蔵入り」しそうな状況にある。
英大衆紙「ザ・サン」(新聞王、ルパート・マードック経営NGN傘下、発行部数120万部)が同映画にまつわるスキャンダルとして、デップのドメスティック・バイオレンス(DV)をすっぱ抜いたのだ。
デップは直ちにNGNを名誉棄損でロンドンの高等法院に告訴した。
審理ではデップによる元妻、アンバー・ハードさんに対する度重なる暴力行為の実態が明らかになった。そしてデップは敗訴。
その結果、同映画の北米での配給元MGMは、米国内での上映に二の足を踏んでいる。この「短信」は読者諸兄姉もすでにご存じだと思う。