ハリウッドにデップへの同情論なし
そのこと自体は目新しいニュースではない。だが、「ハリウッド」から日本を望見すると、日本の受け止め方にはどこか、従来通りのセクハラ観から抜け出せない体質がちらついて仕方がない。
「巨額の製作費を投じて作ったのだからハリウッドがお蔵入りするとは考えられない。何せ、デップは世界的なスター。いずれ、ほとぼりが冷めれば大々的に上映されるだろう」(日本人の映画評論家の一人)
「ハリウッド」にはそうした楽観視する向きはあまり見当たらない。デップに対する同情論は皆無なのだ。
事件の経緯を掻い摘んでみると、こうだ。
デップの元妻アンバー・ハードさん(35)に対するドメスティック・バイオレンス(DV)の事実を暴いた「ザ・サン」の報道に対してデップが名誉棄損で告訴した。
これについて英高等法院は2020年11月、「報道された事実関係に誤りはない」との判決を下し、デップは敗訴した。MGMが映画の配給権を獲得した1カ月後だった。
16日間にわたる審理では、デップが酒を飲み、薬物を使用しながら23歳年下の妻に十数回にわたって暴力を振るっていた事実が明らかになった。
何度か身の危険を感じる状況に置かれたという。証拠写真や録音テープなどで立証された。
ハードさんが2016年5月、離婚を申し立て、同年8月、示談が成立し、デップは和解金7000万ドル(約7億円)を支払った。
1年半の結婚生活だった。
離婚の条件には結婚生活については秘密保持するという条項が盛り込まれていたが、ロンドンの審理では「ザ・サン」が取材に基づく事実関係をすべて暴露したため、機密保持条項はないに等しい状態になってしまった。
ハードさんは、この和解金を米自由人権協会(ACLU)や児童専用病院にすべて寄付、雑誌やビデオでDV被害者向けのメッセージを発信している。
2017年には億万長者のイーロン・マスク氏と交際していることを認めている。