このほかルーマニアは2020年6月、中国広核集団(CGN)によるチェルナボーダ原発の原子炉2基に関する協定を反故にした。その数カ月後、中国企業のインフラ契約への参加を禁止することを検討中であることを発表した。チェコは昨年2月、ドゥコバニ原発の新型原子炉建設の入札から中国企業を除外する方針を決めた。

「ブルガリア、エストニア、ラトビア、ルーマニア、スロベニアなど17カ国中3分の1以上の国が容易に参加できるオンラインサミットだったにもかかわらず、大統領や首相ではなく下級官僚を参加させた。中国には受け入れ難いかもしれないが、中欧諸国の多くは17+1が単なるゾンビメカニズムであることに気づいている」(ザ・ディプロマット)

中国との対決という第二戦線を開いたリトアニア

 リトアニア軍情報部は「国民及び組織はスパイ取り締まり活動に便宜提供又はその他の協力を行わなければならない」と定めた中国の反スパイ法により5Gインフラへのファーウェイ関与は国家安全保障への脅威だと発表。リトアニア議会は同国の電気通信市場、特に5Gネットワークにおいて「信頼できない」メーカーやサプライヤーを排除することを決議した。

 リトアニアのジャーナリスト、デニス・キシネフスキー氏は昨年11月、米ワシントンの超党派シンクタンク、カーネギー国際平和基金への寄稿でこう指摘している。

「バルト三国の小国は世界第2の経済大国がもたらす経済的損失や政治的圧力のリスクにもめげず、最も積極的な姿勢を見せ、他の西側諸国や機関を動かした」

 1991年1月、独立運動が高まるリトアニアに旧ソ連軍が侵攻し、リトアニアの民間人が死傷する「血の日曜日事件」が起きた。これがリトアニア独立革命につながった。「リトアニアはこれまでほとんどロシアに対抗するための国際活動しかしてこなかったが、中国との対峙という第二戦線を開いた」とキシネフスキー氏は指摘する。

「世界中の自由と民主主義を守りたいだけという高尚なレトリックの背後には現実的な計算がある。リトアニアは反中国の推進役として行動することで米国の関心をこの地域に向けさせ、東欧やバルト三国でのプレゼンスを縮小させないという保証を得たいのだ。リトアニアは世界のリーダーシップをめぐる米中の争いの流れに乗ろうとしている」と分析した。