ゼレンスキー大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]ロシア軍の北進を防ぐ「対ロシア要塞線」になっているドニプロペトロウシク州クリヴィー・リフでウォロディミル・ゼレンスキー大統領は生まれ育った。

 豪華なキーウの街並みを見たあと、ゼレンスキー氏の両親が暮らす高層の集合住宅を訪れると「質朴」というより労働者階級の「貧しさ」さえ感じさせた。

ゼレンスキー氏が育った集合住宅。「大統領を支持する」と通りかかった学生は言う(筆者撮影)

貧しい高層住宅の対極にある「腐敗の館」

 キーウ北郊に、2014年2月に反政府運動「マイダン革命」で失脚し、ロシアに逃亡したビクトル・ヤヌコビッチ元大統領が愛人と暮らしていた「腐敗の館」がある。ドニプロ川を堰き止めた人工湖「キーウ海」を一望できる大邸宅の敷地は約140ヘクタール。ゴルフコースやテニスコート、ヘリポート、私設動物園まである。東京ドームの約30倍の広さだ。

ヤヌコビッチ元大統領が愛人と暮らしていた「腐敗の館」(筆者撮影)

 5階建ての大邸宅にはウクライナ正教の礼拝所が設けられ、自分や家族を模したアイコンのモザイク壁画があしらわれていた。愛人のトイレには金メッキが施されたゴミ箱まで備えられている。この落差に筆者は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナの「非ナチ化」「非武装化」を唱えた戦争の虚構と本質を見る思いがした。

「腐敗の館」に設けられたヤヌコビッチ氏専用の礼拝所(筆者撮影)