「コメディーにはいろいろな教育効果がある」

 シャイカン氏は「ウクライナではコメディーが人気です。笑いは健康によく、長生きの秘訣です。ゼレンスキー氏は楽天的でユーモアのセンスにあふれていました」とついこの間のことのように振り返った。

「ロシア軍侵攻のような恐ろしい出来事でもコメディーにすれば怖くありません。ところでコメディーにはいろいろな教育効果があるのをご存知ですか」

 そう問いかけてきたシャイカン氏は実は学生時代、ゼレンスキー氏率いるコメディーチームのライバルチームのリーダーだった。

「コメディーにはコミュニケーションスキル、説得力、交渉術、パブリックスピーキング、励まし、動機づけなど、すべてのエッセンスが詰まっています。そしてチームを一つにするリーダーシップやチームワークが養われるのです」

 ゼレンスキー氏の本質は「コメディアンというより、マネジャーやプロデューサーであり、リーダーなのです」とシャイカン氏は指摘する。ゼレンスキー氏は「危機の大統領」としてウクライナを団結させたのと同じように学生時代からコメディーの台本を書き、初めて舞台に立つ新人も含め、年齢や能力が異なるチームメートを見事に一つにまとめあげてきた。

ゼレンスキー氏に金融を教えたナタリア・ヴォロシャニウクさん(筆者撮影)

 ゼレンスキー、シャイカン両氏に金融を教えたナタリア・ヴォロシャニウクさんは「ゼレンスキー氏は生まれながらのリーダーです。どんな時もユーモアとハードワークを忘れません。いまウクライナは平和を愛する国だと世界中にアピールしています。と同時にこの戦争に勝利しない限り、本当の意味での独立は訪れないとも訴えているのです」と話す。