筆者の単独インタビューに応じるオレクサンドル・ビルクル氏(筆者撮影)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]ロシア軍の占領地域からわずか50キロメートルのドニプロペトロウシク州クリヴィー・リフ市は現在、軍政下にある。ロシア軍がウクライナに侵攻した3日後の2月27日、副首相やドニプロペトロウシク州知事を歴任した地元の実力政治家オレクサンドル・ビルクル氏が中央政府によって軍政トップに任命された。

 ビルクル氏の決断と迅速な対策がなかったら、世界最大級の鉄鉱石埋蔵量を誇るクリヴィー・リフは間違いなくロシアのウラジーミル・プーチン大統領の手に落ちていただろう。そしてロシア軍はクリヴィー・リフを足場にドニプロまで攻め入っていたかもしれない。

 6月22日、筆者の単独インタビューに応じたビルクル氏はこう話しだした。

「ロシアは洗脳された全体主義国家」

「ウクライナの歴史には喪に服する日が2つある。1つはナチスドイツがウクライナに侵攻した1941年6月22日。今日がまさにその日だ。2つ目が“ナチスロシア”がウクライナに侵攻した2022年2月24日だ。プーチンに率いられたロシアは第二次大戦のナチスドイツよりひどい、と自信を持って断言できる」

「ロシア軍は平和に暮らしている人々を撃ち殺し、暴力を振るっている。彼らは人々を拷問し、平和な都市を攻撃している。ロシアは完全に洗脳された国だ。洗脳された全体主義国家だ」

 親露派ビクトル・ヤヌコビッチ氏が大統領時代に副首相を務めたビルクル氏のことを、ロシア軍が侵攻してくる前までは「親露派」とみる向きもあった。