(国際ジャーナリスト・木村正人)
[キーウ発]ウクライナ東部ルハンスク州の要衝セベロドネツクの制圧を目指すロシア軍は現在、アゾト化学工場を中心とする工業地帯に猛攻をかけている。この化学工場の地下施設に子供約40人を含む住民約550人が避難しているとされ、「アゾフスターリ製鉄所での籠城が続いた南東部の港湾都市マリウポリと同じ惨劇が繰り返される」との懸念が強まっている。
そのアゾフスターリ製鉄所での籠城についてだが、ロシア国防省は5月16~20日、ウクライナ軍や準軍事組織「アゾフ連隊」の兵士計2439人が同製鉄所から投降したと発表した。このうち1000人以上が尋問のためロシアに移送されたと露メディアが報じた。
アゾフ連隊の司令官でロシア軍の捕虜になったバクダンさんの妻ナタリア・ザリツカさんが16日、筆者のZOOMインタビューに応じた。アゾフスターリ製鉄所で最
「ドネツク人民共和国に連れて行かれる」
「夫がどこにいるのか、生きているのかも分からないのです。夫を取り巻く環境について何も知らないのです。最後に連絡があってから、6月17日でちょうど1カ月です」
夫ボグダンさんがロシア軍の捕虜となってしまったナタリアさんは肩を落としてそう語った。夫はアゾフスターリ製鉄所から投降した5月17日、ナタリアさんに2通のメールを送ってきて、メッセージアプリのテレグラムで話した。
夫は「おそらく親露派が実効支配する東部のドネツク人民共和国に連れて行かれるだろう」とだけ告げた。4日後、国際赤十字の代表が電話をかけてきて、夫がアゾフスターリ製鉄所を出たことを確認した。しかしナタリアさんには彼が今どこにいるのかさえ分からない。刑務所にいるのか、負傷しているのか、この1カ月間、何の情報もないのだという。