「ものすごく愛しているよ、心配しないで」

 6月14日、キーウ中心部にある、アゾフスターリ製鉄所で戦った兵士たちの解放を求める巨大垂れ幕の前で2人の家族に偶然あった。

 ブラダさんは1カ月前に婚約者パベルさんから最後のメールを受け取った。5月16日に送られてきたメールには「ものすごく愛しているよ、心配しないで」と書かれていた。

アゾフスターリ製鉄所で戦った兵士の解放を求めるブラダさん(左)とナタリアさん(筆者撮影)

「パベルは私のボーイフレンドで婚約者、マリウポリのアゾフスターリ製鉄所で戦った兵士です。彼は皆と同じようにマリウポリを守るためにそこにいました。5月16日以降、彼に何が起きているのか分かりません。ロシアは国際赤十字や国連が彼らと接触することを許可しておらず、私たちは彼らと連絡が取れません」

「彼らは激しく爆撃されました。ひどい状態でした。毎日50発以上の爆弾が投下され、非常に困難な状況だったそうです。4月中旬、アゾフスターリ製鉄所にすべての部隊が合流しました。完全にロシア軍に包囲されたのです。今は彼が私に電話をかけることも、私が彼に電話をかけることもできません」

 ブラダさんは声を落とした。

ブラダさんと婚約者のパベルさん。今年1月1日、マリウポリの芸術劇場前で(ブラダさん提供)