そして中国の具体的な偽装手段を紹介し、注意を呼びかけた。
「海外で中国の情報機関は伝統的に、外交的に偽装し、国が出資する孔子学院、中国企業や通信社、海外留学中の中国人学生を利用する。中国の情報活動は中国の核心的利益に関わっており、例えば、リトアニアがチベット自治区や台湾の独立を支持せず、これらの問題を国際的なレベルで取り上げることがないよう働きかけてくる」
さらにと、狙いと手口をこんなふうに暴露して見せた。
「リトアニア国民から国家やNATO、EUに関する機密情報を入手しようとする恐れがある。中国に同調し、政治的影響力を行使できる個人や政策決定者ら適切なターゲットを探している。贈り物をしたり、中国への旅行費用を負担したり、中国で開催される研修や講座費用を負担したりすることで影響力を持とうとしている」
これを見れば、リトアニアの国家安全保障省がどれだけ中国を危険視しているか分かるだろう。だから一帯一路のような中国主導のインフラ開発にも否定的だ。
リトアニア唯一の港湾都市・クライペダ港の開発に関し、同国のギタナス・ナウセダ大統領は「強引に進めるのは賢明ではない。国家安全保障上の基準で受け入れられる特定の投資者はまだ見つかっていない。もし中国になれば欧州全体にとって大きな問題になり、国家安全保障に関わる」と強い危機感を示した。港湾利権を中国に握られ、ロシアと連携されればそれこそ命取りだ。
「中国の17+1はゾンビメカニズム」
2012年、中国は中東欧諸国との協力枠組み「16+1」を打ち出し、その後ギリシャを加え「17+1」に拡大した。当時は欧州各国がチャイナマネーに飲み込まれることになりそうにも見えた。だが10年後の現在、事態はそのようには進んでいない。アジア太平洋の政治・安保専門オンライン誌「ザ・ディプロマット」は昨年2月「17+1はソフトパワーとハードパワーを駆使し欧州に影響圏を作り出す玄関口になるはずが、通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の次世代通信規格5G参入問題で頭痛の種となった」と指摘した。
どういうことか。
「17+1」のほぼすべての国がファーウェイの5Gネットワークへのアクセスに照準を合わせた覚書を米国と交わしたり、中国のハイテク企業を封じ込めるワシントンのクリーンネットワーク計画に参加したりしたのだ。中でもリトアニアは同年5月「17+1」からの離脱を発表し、他のEU加盟国にも離脱するよう呼びかけた。背後に米国の動きがあったのは疑いようがない。