2011年の国民投票では、原発反対派が圧勝した(写真:AP/アフロ)2011年のイタリア国民投票では、原発反対派が圧勝した(写真:AP/アフロ)

 欧州では原発を再び利用しようという動きが活発化している。イタリアは既に脱原発を完了しているが、現政権は新型モジュール炉(AMR)や小型モジュール炉(SMR)の利用を可能にする法案を取りまとめ、来年早々、議会に提出する予定だ。脱原発に舵を切った欧州各国は、なぜ再び原発再利用に舵を切ろうとしているのか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 2022年2月のロシア発のエネルギーショック(ロシアショック)をきっかけに、日本でも原子力発電所の再稼働に向けた動きが着実に進んでいる。

 2022年12月には、九州電力の玄海原子力発電所3号機が、翌23年2月には4号機がそれぞれ再稼働した。今年11月には、東北電力が女川原子力発電所の2号機の再稼働を予定している。

 ヨーロッパでも、それまでの脱原発の流れを見直し、原発を再び利用しようという動きが活発化している。

 そうした国の一つであるイタリアは、新型モジュール炉(AMR)の建設に向け、フランス電力(EDF)、または米国の原子力企業ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニー(WEC)と新会社を設立することを検討しているようだ。

 ジョルジャ・メローニ政権は、AMRのみならず小型モジュール炉(SMR)の導入も検討するなど原発の再利用に前向きである。

 イタリアは1986年におきたチェルノブイリ原発事故を受け、翌87年に原発の稼働の是非を問う国民投票を実施。稼働を否定する声が賛成する声を上回ったことから、90年までにすべての原発を停止した経緯がある。

 その後、第4次シルヴィオ・ベルルスコーニ政権(2008年5月~11年11月)の下で原発の再利用に向けた動きが模索されたが、2011年6月に行われた国民投票で9割以上が拒絶したため、再利用は凍結となった。

 当時は、同年3月に生じた東日本大震災と福島第一原発事故の直後であり、国民の原発に関する拒絶感が強かったためだ。

 各種報道によれば、メローニ政権は年内にAMRやSMRの利用を可能にする法案を取りまとめ、年明けにも議会に対してそれを提出する予定のようだ。そして2030年までには原発の稼働を実現する方針である。

 AMRやSMRは小型で出力も小さいが、一方で構造が簡素で建設費用も安いため、短期間での実用化が可能と踏んだのだろう。

 ここで、ユーロスタットのデータより、イタリアの電源構成を確認してみたい。