原発再稼働の影にあるロシアの存在

 2022年時点で最大の電源はガス火力であり、電源の49.8%を占めていた(図表1)。続く電源は35.4%を占める再エネだが、内訳は水力、太陽光、風力でほぼ三等分されている。いずれにせよ、ガス火力と再エネが電源の主力で、石炭火力などが補助の役割である。

【図表1 イタリアの電源構成(2022年)】

(出所)ユーロスタット(出所)ユーロスタット

 今年4月、イタリアのトリノで開催された主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合で、G7は排出削減措置の施されていない石炭火力発電所を2035年までに段階的に廃止することで合意した。この合意を受けてイタリアも同年までに石炭火力を排除する予定だが、それに代わる電源としてメローニ政権は原発に注目したようだ。

 こうした脱炭素化の文脈からだけではなく、エネルギー安全保障の観点からも、メローニ政権は原発の再利用を重視している。

 再びユーロスタットのデータによると、2023年におけるイタリアの電力輸入依存度は17.3%と前年(14.5%)から上昇した(図表2)。このことからは、イタリア国内の電力供給がひっ迫していることが窺い知れる。

【図表2 イタリアの電力輸入依存度】

(注)輸入依存度=輸入量/(国内生産量+輸入量-輸入量)(出所)ユーロスタット(注)輸入依存度=輸入量/(国内生産量+輸入量-輸入量)(出所)ユーロスタット

 それに、イタリアは2021年時点で、国内で消費する天然ガスの約4割をロシアに依存していた。イタリアもまた、ロシアショックに伴う天然ガス価格急騰の影響を色濃く受けた国の一つだったわけだ。

 その後、イタリアは天然ガスの調達の多様化に努めているが、ガス依存度を下げるためにも、メローニ政権は原発の再利用を模索している。