再エネと火力発電に依存する日本の末路

 原発の稼働以外にも、イタリアは天然ガスの調達強化にも取り組んでいる。具体的にはアルジェリアからの輸入の強化だ。

 かねてよりイタリアは、地中海を隔てた先にある北アフリカのアルジェリアからパイプライン経由でガスを輸入してきた経緯がある。イタリアはアルジェリアの開発を支援し、ガスの輸入を増やそうとしている。

 このようにイタリアは、あくまでエネルギー供給の一手段として原発を位置付けようとしているに過ぎず、フランスのような原子力国家を目指しているわけではない。とはいえ、脱原発を完了したイタリアが脱炭素化やエネルギー安全保障の観点から再び原発の利用を模索する姿は、2023年に脱原発を完了したドイツの将来を暗示している。

 日本もエネルギーの安定供給に鑑みた場合、原発の再稼働は避けて通れない課題である。もちろん、施設の再稼働のみならず、事故リスクを低下させるためには、新設も必要だろう。

 再エネと火力発電だけではエネルギーの安定供給が難しいことは、グローバルな再エネシフトをけん引してきたヨーロッパが、まさに体現したところである。

 日本では10月27日に衆議院選が行われる。与野党の公約が出そろったが、原発の再稼働に関しては意見が割れている。

 再エネの普及と火力発電だけではエネルギーの安定供給など見込めず、高いエネルギー価格を受け入れざるをえないことは、その先達であるヨーロッパであり、イタリアの事例が雄弁に物語っている。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部副主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。