8インチの装置が入手できず、8インチの工場が建設できないのなら、需要が増大しているレガシーなアナログ&パワー半導体を12インチ工場でつくればいいではないかと思われるかもしれない。
しかし、それは簡単なことではないのである。12インチの製造装置は、最先端の微細化ができるように進歩を遂げていると記載した。例えば、TSMCが5nmの生産に用いている装置で、100nm以上(例えば100~500nm)のパタンを加工しようとしても、恐らくできない。
ラフなパタンの加工には、それに適したプロセスと装置が必要であり、最先端のプロセスと装置ではその加工はできないのである。つまり、今まで8インチの工場で生産していたレガシーなアナログ&パワー半導体を、いざ12インチの工場で生産しようとしても、不可能とまでは言わないが、相当難しいのである。
車載半導体不足は続くよ、いつまでも
クルマ産業界では自動運転化とEV化が今後ますます進むだろう。その結果、クルマ用のアナログ&パワー半導体の需要が右肩上がりに増大することになる。しかし、8インチ工場で生産しているレガシーなアナログ&パワー半導体の生産キャパシティを急拡大させることは難しい。
その理由は、8インチの装置が入手困難なため、8インチ工場の新増設ができないこと、および、8インチの工場で生産していたレガシーなアナログ&パワー半導体を12インチの工場で生産することもかなり難しいからである。
となると、クルマ産業が100年に1度の大変革期を迎え、自動運転化とEV化が進み続ける限り、車載半導体不足は続くことになる。クルマメーカーにとっては受難の時代が到来したといえよう。