クルマに必要な半導体

 世界半導体市場統計(World Semiconductor Trade Statistics、WSTS)が発表したクルマ用に使われている半導体の種類と出荷額を図4に示す。

図4 クルマに使われる半導体(2019~2021年)
出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 WSTSによれば、クルマに使われる半導体は、少なくとも15種類ある。その中でも特に目立つのがアナログ半導体で、2019年と2020年に150億ドル以下だったが、2021年に約240億ドルに急増している(なお、WSTSの定義では、このアナログ半導体の中に、パワー半導体も含まれている)。この挙動からも、(パワーを含む)アナログ半導体が不足していることが髣髴とされる。

 では、なぜ、2021年にクルマ用の(パワーを含む)アナログ半導体市場が急拡大したのか? 図1に示したように、クルマの生産台数は減少している。にもかかわらず、この急拡大である。

 その原因は、クルマのEV化と自動運転化が急速に普及し始めたからだと推測できる。

 コンサルティング会社のKPMGの発表資料「車載半導体:新たなICEの時代」(2020年4月23日)によれば、クルマ1台に搭載される半導体は、内燃エンジン車が500ドル以下であるのに対して、EVはその2倍以上の約1000ドルになるという。また、自動運転については、レベルゼロ(手動運転)に対して、完全自動運転のレベル4または5には8~10倍の約3000ドルもの半導体が搭載されるという。

 EVにはパワー半導体が多数必要である。加えて、自動運転車には、さまざまなセンサからのアナログ情報を処理するアナログ半導体が多数必要である。つまり、2020年から2021年にかけて、クルマの生産台数が減ったにもかかわらず、クルマに搭載される(パワーを含む)アナログ半導体が急拡大したのは、EV化と自動運転化が進み始めたことに起因すると言える。

 そして、EV化と自動運転化は、今後ますます普及が加速する。それはつまり、(パワーを含む)アナログ半導体の需要が今後も増大し続けることを意味する。