国内線で北京に到着、ニューズウイークのカメラマン、チャーリーに会いに行った。チャーリーはホテルの部屋で不貞腐れていた。

「ホテルの玄関で兵士が俺たちを見張っている。取材に出られない。顔が目立つからね。一日ベッドで寝てろってさ」

 と両手を拡げて降参のポーズをとった。

 北京が弾けて以来、中国共産党当局は反抗する者を次々と逮捕、外国メディアを国から締め出し、国内にも厳格な報道管制を敷いていた。

 何とかしなくては・・・ということで、市場で色褪せた紺色の人民服と人民帽を買った。さらに中古自転車とカメラを隠す為の安っぽい小さなビニール鞄を調達。ホテルの部屋で着替え、鏡で見ると、どこから見ても立派な中国人労働者が出来上がっていた。

天安門広場では恐怖心でシャッターが押せず

 まず、天安門広場を目指す。その頃の北京市内の道路を席巻していたのは自動車ではなく自転車だった。自転車の海に完全に溶け込んだ。誰も自分を気にしない。リュックを背負い、AK47自動小銃を持った人民軍解放軍兵士が列を作って移動している。道路の植え込みの中には獲物を狙うハンターのように兵士が身を隠していた。

北京市街を移動する人民解放軍の兵士たち(写真:橋本 昇)
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銃を持って市民を威嚇する兵士(写真:橋本 昇)
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